「初音ミク - Project DIVA -」インプレッション

初音ミク その名知るもの 買うの義務」

2009年7月2日、セガからPSPソフト「初音ミク - Project DIVA -」が発売されました。当然自分も購入したわけですが、もう極論すると「【初音ミク】という単語に反応してしまう人は、例えPSPごとであろうとも、絶対に買うべきゲームソフトである」と言い切れるぐらい素晴らしいソフトです。
初音ミク誕生」「キオ式ミクのデビュー(「01_balladeを歌わせてみた」の出現)」MikuMikuDance出現」の次にエポックとなる出来事が、今回の「初音ミク - Project DIVA-」の発売だと言えるでしょう。

ということで、現在20時間ほどのプレイ時間ですが、インプレッションを行ってみます。

ゲームシステムについて

音ゲーのシステムとしては、押忍!闘え!応援団!」(以下「応援団!」)の系統になるでしょうか。画面上の様々な場所と様々なタイミングで表示される判定ポイント*1に対して、その判定ポイント上で回る「針」のタイミングやボタン指定オブジェクトが判定オブジェクトに重なるタイミングで指定されたボタンを押すシステムです。

音ゲーのシステムは大きく二つのタイプがあります。音楽でいうところの「○分音符、○分休符」という概念が

  1. 画面から正しく読むことが出来、それを「鳴っているサウンドから聞き取るテンポ」に同期して打ち込むタイプ
    ゲームシステム上、楽譜や音が主で、画面(絵)が従となるタイプ
  2. 画面のみからは読むことが出来ず、原理的に「画面上の動き」のみに同期するタイプ
    ゲームシステム上、画面(絵)が主で、楽譜や音が従

となる二つのタイプです。前者の代表はパカパカパッションバンドブラザーズ、後者の代表はコナミ音ゲー全般」太鼓の達人でしょうか。このゲームは後者に入りますね。

自分はどちらかというと、前者のシステムを得意としているというか、「音楽として楽譜的にどの位置にどのオブジェクトがあるのかが、画面情報から完全に読み取ることが出来、その情報から音楽に合わせて打ち込む」というゲームのほうを好むので、今回のゲームは自分にとっては今回のゲームはちょっととっつきにくかったですが、かつて「応援団!」にちょっとハマってたことがあったのでその経験は活きました。
ですが「応援団!」をプレイしたことのない人は、コナミ音ゲー太鼓の達人のように、「判定ラインが特定の場所に固定されている」わけではないので、ドラギタやポップンを得意とする人も、苦労すると思います。ただし、「応援団!」システムの拡張としては、割と自分は「見やすい」と思いました。○×△□ボタンをそれぞれ押させるタイミングの指定方法が結構上手く消化されています。

収録楽曲について

まさに「初音ミクブームを最初期から現在まで支えつづけている、数々の名曲」が勢ぞろい、ある意味究極のベストアルバムといってすらいいものです。ゲーム開始状態から初音ミクの初期代表曲「恋スルVOC@LOID」も比較的最近の代表曲「ワールドイズマイン」も収録されているため、とっつき易さは非常にいいと思います。「初音ミク」目当てで買う人にとっては、初期状態での出現曲はどれも知らないということは殆どないだろう、というぐらいに「分かってる」ラインナップです、初期状態出現曲の数曲は順序が決まっているわけではないので、「自分の知っている曲から始める」というのが、少なくとも初音ミクのファンにとっては誰でもできるようになっているのは良いと思いますし、ファンじゃない人向けとしても、カーソルデフォルトが「ワールドイズマイン」で、いわゆるオタクな匂いが比較的少ない曲だというのもセガとしてはいい戦略だと思います。
自分は「ワールドイズマイン」をプレイしてみたあと、

    1. 「恋スルVOC@LOID」(初期)
    2. 「Ievan Polkka」出現
    3. 「あなたの歌姫」出現
    4. 「金の聖夜霜星に朽ちて」出現
    5. みっくみくにしてあげる【してやんよ】」出現

というルートにはまってしまいましたw
初期の頃からミクにはまっていた人は、これだけでおなか一杯になると思います。

難易度

「収録曲を全曲出現させる」「PV(後述)を出現させる」ためのハードルは比較的低いです。音ゲー初心者やゲーム初心者でも頑張れば比較的簡単にクリアできるのではないでしょうか。昨今の音ゲーと比較するとかなり敷居や難易度が低く、あっさりしてやりやすいと思います。ただ先にも書いたように、「画面上から、音符を読めないシステム」であるので、HARDになると「音楽として、どのリズムで打ち込むのか」がパッと読めないため、苦心することが多いかもしれません。「モジュール」と呼ばれるミクの着替えセット(後述)を出現させるには、NORMALモードやHARDモードでのクリアが必要とされることが時折あり、少々難易度は高いものもありますが、「総じて、一般人向きは難易度が低い」ため、気にするほどのことではないと思います。

グラフィック及びサウンド

音楽については好みが分かれますし、収録曲は大概ニコニコで見られるので語ることは多くないのですが、選曲が本当に素晴らしい。初期代表曲「恋スルVOC@LOID」「あなたの歌姫」から、ryoさんの代表曲「ワールドイズマイン」メルトまで、名曲の数々の選曲は本当に文句の付け所がないぐらい素晴らしいです。
グラフィックに関しては「さすがプロの本気は違う」という感じですね。このゲームは「PV」と呼ばれる、3D初音ミクが歌い踊る映像をバックに、前面に音ゲー用オブジェクトが飛び交うものなのですが、その「ミク」のモデリングとモーションの質が本当に素晴らしい。キオ式ミクを見たとき以来の衝撃があります。それを含めてPV映像がかなり本気度が高く、ツッコミどころが殆どないのはさすがプロの仕事は違うという感じです。

「PV」について

このゲームは、「PV」と呼ばれる、「3D初音ミクが、曲に合わせて歌い踊ったりする映像」をバックに音ゲーを行います。PV映像は、ゲームである程度の成績を出せば後は自由にその曲のPVを鑑賞することができるようなっています。そしてそのPV映像が本当に素晴らしい出来です。ニコニコやpiaproなどでファンが練り上げてきたイメージとは一味違いながらも、それでいて「外してない」「分かってる」センスと出来の素晴らしい映像群は、それだけでも購入の価値があるほど素晴らしいものが多いです。特に一発目の「ワールドイズマイン」なんかは、作品イメージをさらに素晴らしいものにする、非常に質の高いPVとなっています。そのほかにも、他の様々な曲にはそれぞれPVが設定されており、中には「1枚絵が順次スライドショーのように切り替わる」だけのものもありますが、それでも曲の雰囲気やイメージを全く壊さない、素晴らしいものです。

「モジュール」について

このゲームにおいて、ミクは色々と「着せ替え」が可能です。デフォルトの衣装から、私服っぽいもの、ゴスロリ、または水着やスク水まで、様々な衣装に着せ替えることが出来ます。また、着せ替えの気分で「キャラクター変換」も行うことができ、メイコカイトリンレンルカなどのクリプトン純正ボーカロイドファミリーだけならず、亞北ネル弱音ハクなど、まさか商業ソフトの上でそんなものが見られるとは夢にも思わなかったキャラクターにまで変更できます。この「本気度」はまさに信じがたいものです。

そして、制作メーカーの「本気度」の高さ

正直、このソフトの情報を知ったときから購入するまで、「単なるキャラクター商品、キャラゲーの範囲を出るものではない」と思っていました。ニコニコやpiaproに代表されるCGM文化上では非常に重要なムーブメントであるけれども、メジャーな世界のゲームソフトになるとなると、「愛や敬意のない製作陣」が「あくまで仕事として作る」もので、「遊べなくはないが、熱情を感じない」凡百のソフトになるんじゃないかと思っていました。

しかし、その杞憂は本当に良い方向に完全に完璧に裏切られました。このソフトは、制作陣の「愛情」と「敬意」、それも「熱情」といっていいレベルの情熱が込められています。勿論そんなものがなくても「プロ」としてやっている以上、それなりのクオリティ、CGMといって喜んでいる「アマチュア」を一蹴するようなものを作って黙らせる事だってできるでしょう。しかしこのゲームは違います。「アマチュアの情熱と、プロのクォリティが同居するソフト」といっても過言ではありません。こんなレベルのものとは、そうそう滅多に出会えるものではないでしょう。開発もとのブログを見ても、心意気といいましょうか、「情熱と敬意」が込められてて本当に素晴らしいものだと思います。

開発元「ディンゴ」からのメッセージ
http://www.dingo.co.jp/action.html#content004

piaproとの共同企画の意義

このゲームは、piaproと共同で企画が進められたそうです。ゲーム中のLOADING画面や、一部の楽曲のPVにおいて、piaproユーザーが描いた「ミク」画像が、ふんだんに贅沢に使われています。これは本当に素晴らしいことだと思います。クリプトンの伊藤社長が時折口にされる「CGM活動の出口」の一つとなっているのではないでしょうか。ギャラが発生したかどうかは分かりませんが、「自分の描いた絵が、セガという有名メーカーの、PSPというメジャーなプラットフォームで堂々と使われる事の誇り、充実感」は本当に凄いんじゃないでしょうか。勿論仲間内からのPageViewを得るのもいいでしょうが、このような形で使われることは本当に素晴らしいことだと思います。

総評

このゲームは、ゲームそのもののクォリティが素晴らしいの一言であるのは勿論、「メジャーのメーカーが、CGM文化に敬意と理解を示し、アマチュアと同レベル以上の情熱を持って接してくれて、プロのクォリティで形にしてくれた」事も素晴らしいことだと思います。冒頭にも書きましたが、このソフトの出現は、「初音ミク」という文化の中で、「誕生」「キオ式ミクの登場」「MMDの出現」に続くぐらいの重要なエポックになるでしょう。PSPを持っている方は速攻、持ってない方もPSPごと購入しても絶対に損はしない、そんなソフトだと思います。

*1:もちろん、曲とシーケンスによって出現位置は厳密に決まってはいるけれど、ギターフリークスドラムマニアバンドブラザーズ太鼓の達人などのように、楽譜の場所やタイミングのポイントがゲームシステム上で一つに決まっているわけではなく、判定用オブジェクト画面中に散らばる、という意味です。