劇場版マクロスF〜イツワリノウタヒメ〜 インプレッション

マクロス健在」

実は自分はテレビ版は大まかな話の筋とかは聞いてたんだけど 殆ど映像を見たことがなくて、その状態で見てみたんですが。

「いい意味でマクロスだな〜」っていう感じですねー。 メカあり、歌あり、三角関係ありと。自分が見たかったマクロスがそこにありました。細かいことを言えばいろいろあるけれども、小難しいSF設定を並べて堂に入るでもなく、独りよがりの暑苦しい政治的主義主張をひけらかしてくるのではなく、「宇宙を舞台にして、ヴァルキリーを小道具にした普通のドラマ」。 25年前と変わらないマクロス、それが映画館にありました。

全体的な流れ

ストーリーはそれほど複雑ではなく・・・っていうか殆どないに等しく、 まあ複線貼り終わったかな、ってところで今回は終わったわけですが、 後半において伏線回収が楽しみなフラグがいくつか立ってて、 「前編」としては非常によさげだと思います。

歌に関しては、シェリルさん超えろいっす!」っていうのはさておくとして、それでもかなり映像を作りこんできてましたねー。 シェリルの最初のコンサートの導入は凄くいいですね。 「はじめに歌があった」から「あたしの歌をきけー!」までの一連のシーケンスが本当に素晴らしい。自分はこの導入部を見れただけで、もう元を取った気分です。あとはもう何があっても許すぞ!とすら思うぐらい。

ランカが歌うシーンも、非常に良かったですね。特にミシェルに挑発されて歌い始めるとき。 「どっから出てきたお前ら>伴奏の面々」っていう突っ込みが野暮に感じるぐらいです。「シェリルがライブステージ本番で歌う」シーン以外にもそういう音楽的演出がされていて 河森さんだかトロ・ステーションだったかで「ミュージカル的なイメージ」っていうのがなるほどとうなづけます。

ただ、自分がもう年寄りの範囲に入っているからだとは思うのだけれど、 歌そのものにあまりカタルシスを感じなかったのがちょっと残念ですね。凄くいい曲だとは思うし、ヘッドフォンで聞く分にはいいのだけれど、劇場でライブとして聞くにはカタルシスが足りなかった。まるでBGMの延長のような感覚というんでしょうかね。人の声を楽器として使うような使い方というか。曲として凄く複雑で難解で、リン・ミンメイFire Bomber、Sharon Appleのように「分かりやすく耳に届きやすいドライブ感」があまりない。

でもそうは言うけれども、さすがは菅野よう子、楽曲自体は本当に素晴らしいものでした。菅野よう子節全開なシェリルのアップビートな今日kは本当に聞いていて心地が良い。ユニバーサルバニーなんか、ライブ映像も含めて本当に度肝を抜かれました。

戦闘

戦闘シーンは・・・本当にすごいですねあれ。 マクロスの高機動三次元戦闘には慣れてるつもりなんだけど、 久々に「うわー、おいつかねー」っていう感覚を味わいました。 今時の若いアニメファンはこれについてこれるんだろうなぁ。 自分も年をとったものです。 恐らく色彩設計や明度設計の問題もあるのかもしれないですけどね。 全体的に「色が暗い」から、見えづらいっていうのもあるかもしれない。でもそれを差っ引いたとしても凄まじく高速なサーカスは圧倒されるの一言。

中盤の戦闘パートや最後のクライマックスの戦闘パートはもう圧巻というしかない。 やっぱマクロスはこれだよな!っていう。アップテンポなリズムに乗って、宇宙をヴァルキリーが駆け抜け、無人機ですらどうだろうというぐらいの高機動を成し遂げるその迫力は素晴らしいものでした。

劇場の雰囲気

本当に驚いたんですが、マクロスを見に来る人、本当に若いファンや一般人ファンが多いのね。 自分みたいな「いかにもオタク」って言う人が本当に少ない。 むしろ一般人がデートで来たりしてたり。マクロスの「三角関係」「歌」「メカ」っていう明確な柱は非常に分かりやすいし小難しいSF設定やSF物語、思想語りは思い切りばっさり蹴飛ばしてるんで、一般の人や若い人が入って来やすいんでしょうね。「メカ」を除けば、人類が古今東西作ってきたドラマと何も変わらないわけだから。

結局2回目を見に行く自分

なんだかんだで1回目を見終わった後にすぐにチケット売り場に並んで 2回目を見たくなるような、非常にいい娯楽作品だったと思います。小難しい話を全く抜きにしてるのがよくも悪くもマクロスだなぁと。

あと映画館の迫力はやっぱり凄いです。巨大なスクリーンに投影される「宇宙」とか「巨大な空間にある巨大な構造物」の感覚が、やっぱ普通にモニタで見るのとはぜんぜん違う。巨大なスクリーンに投影されているという事実と、目を凝らせばどこまでも細かくどこまでも遠くまで見えそうなほどの細かい描写がそういう「空間の巨大さ」を感じさせてくれるのでしょうか。

音も、やっぱり部屋でスピーカーやヘッドフォンで聞くのとではやっぱりぜんぜん違う。なんというんでしょうね、「音」だけでなく、「空気の振動」を全身で感じられる感覚。耳だけではなく、全身で空気の振動を感じ取り、音を感じるという感覚。爆発なんかのエフェクトで、空気が震えてる感じが体に伝わるというのは大きいです。こればっかりはよほどのシステムを組まないと、家では絶対に味わえないですからね。

なんだかんだいって、今回の劇場版は「劇場で、巨大スクリーンと大音響システムで鑑賞してこそ意味のある作品」といっても全く言い過ぎではない作品だと思います。トロステーションで河森さんも言っていたと思いますが、BDとかDVDはあくまで「劇場版を見た感覚や記憶を思い出すキー」扱いで、劇場で劇場版を見て初めてその迫力や凄さが分かる映像と音響と音楽、といえると思います。

そういえば・・・・。

余談ですが、自分は二度ほど見てもどうしても分からなかったのだけれど、シェリルのイアリング、なんであんなところに落ちてたんだろう。それまでの経緯からしたら、あんなところに転がり込む可能性は全くないと思うのだけど。そこらの街の隅に転がってたとかならともかく・・・。