デッドボールPの件に関してのクリプトン社の見解来ました

苦渋の選択

http://blog.piapro.jp/2008/01/post-15.html より引用

今回、公序良俗に反する歌詞を伴う作品がニコニコ動画に連続的に投稿されているとの通告を一般視聴者の方より受け取りました。弊社で調べましたところ、確かに公序良俗に反すると認められました。また初音ミクのイメージを損なう恐れがあると見受けられ、それらが同一人物と思われる作者による投稿ということもあり、誠に残念ではございますが、黙認のレベルを超えていると判断せざるを得ませんでした。何卒ご理解いただけますようお願いいたします。

なんか随分と奥歯にモノが挟まった言い方をしているなぁ、という気がしますが、とりあえずはクリプトンにしても苦渋の選択だったろうというのが分かりますね。大人の事情がいろいろあるんだろうなぁ。VOL7だかまできて、その半分ぐらいが10万再生を突破している段階でこういうのが来るというのは、デPの曲というのは、クリプトンにとっては「通報されたら対処するしかないが、通報されない限りはスルー」扱いだったのでしょうね。テレビに乗せられるかという次元だと「1LDK」はセーフだよなぁとは思うけれど。

それにしてもクリプトンらしくないなぁと思うのは、クリプトンがニコニコに権利者削除させたことです。あそこの過去の行動原理からすると、まずはデPに直接コンタクト取りそうなもんなんですが・・・。

まあそんなことは今更しょうがないですね。デッドボールPの今後の作品に期待したいと思います。新曲の「いつしか、必ず。」が物凄い神曲っぷりを発揮してくれてますしね。

デッドボールPの楽曲が消されてる件

「デッドボールP」と呼ばれる初音ミクプロデューサが居ます。自分にとって一番気に入っているプロデューサです。ひょっとしたらOSTERさんやotomaniaさんよりも気に入っているかもしれません。

歌詞の内容はエロティシズムに走った過激なものが多いですが(デッドボールという二つ名の由来です)、ただエロティックな言葉を言わせて見たというだけのものじゃなく、歌詞の世界や起承転結がついていて「デッドボールPの世界」をきっちり作ってきますし、何よりもその「楽曲そのもの」のレベルが大変高い方です。曲風のバリエーションも非常に多彩で曲のオケ(伴奏)のクォリティも大変高く、作る楽曲の質も高いレベルで安定しており、総合力では「初音ミク」プロデューサの中でも1,2を争うレベルにあると思っています。

ファンも非常に多く、「はっぺー祭り」(http://www.nicovideo.jp/watch/sm1883246)という非常に心温まる(?)祭りもあって、その界隈に集まるコメントは良かれ悪かれデッドボールPに対する尊敬と愛情と敬意がこもっています。

しかし、そのデッドボールPを悲劇が襲います。「権利者削除」です。久々のブログ日記はこの話題を書いてみようと思います。

削除確認されている動画

現時点で削除されている「デッドボールP」の動画は下記の通りです。(マイリスト登録順)
勿論カバー曲ではなく、歌詞も楽曲も「デッドボールP」のオリジナルです。

nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲3 私は人間じゃないから -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1418163
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲1 既成事実 -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1480739
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲5 /hidden -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1578952
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲2 牛乳飲め!-Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1687669
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲7 ベジタリアン:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1714175
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲8 続・既成事実 -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1849905
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミク+鏡音リンの百合ジナル曲 1LDK -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1982760
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲6 木枯らしの朝 -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm2048177

まあ要するに、デッドボールPの二つ名の由来であるところの「ちょっとHな」曲が殆ど削除されているわけです。

「権利者削除」

今回の「デッドボールP楽曲削除」の件で、一番解せないのは「権利者の申し立てにより削除」という点です。これらの楽曲は歌詞も曲もカバーではなく「デッドボールP」のオリジナルなので、デッドボールP本人以外に基本的に削除申し立ての権利はありませんが、唯一の例外がクリプトン・フューチャー・メディアです。

デッドボールPの楽曲は基本的にボーカロイド/バーチャルアイドルとしての初音ミクをフィーチャーしたものが多いですし、また規約ギリギリ(というかアウト?)な歌詞の内容からしてもクリプトンコードに抵触しかねないものであるのはファンならみんな分かってるのでしょうが、それでも「あのクリプトンがこれらを消させるだろうか?」という疑問が湧いてきます。

先にも書きましたが、ファン・・・というか信者である自分の贔屓目抜きにしても、デッドボールPの楽曲は極めてレベルが高いと感じます。オケの出来、ミクのパラメータ調整、そして深い歌詞の内容、どれ一つとして「ちょっとエロいセリフを喋らせてみようwww」的な悪ふざけを感じさせるものはなく、エロティシズムに走ってるとはいえ、「真正面からマジメに作っている」のが感じられます。そういう気合の入ったものをあれだけ空気を読めるクリプトンが消させるのだろうか、というのが自分の疑問です。

結局消させたのは誰なんだろうか

といっても、デッドボールPの楽曲がことごとく消えていることと、その理由が「権利者削除」であることも事実ですから、考えられる可能性は以下の4つしかありません。

  1. ニコニコ運営のミス
  2. クリプトン・フューチャー・メディアが申請した
  3. クリプトン・フューチャー・メディア」を騙った人が申請した
  4. 「アレは本当は俺の曲だ」という人が申請した

1.はまあ可能性はありえなくも無い(マチュアバンドのオリジナル曲を消した前科があります)ですが、これは除外できるでしょう。
となれば残るのは「クリプトン自身」か「クリプトンを騙る第三者」か「本当の制作者を騙る第三者」しかありえないことになります。

・・・やっぱりクリプトンが消させたんでしょうか。流石に「クリプトンを騙る第三者」とか「本当の制作者を騙る第三者」というのは、可能性としては考えられても実際にそれで削除される可能性を考えたらほぼ可能性としてはないですから。

もし本当に「デッドボールPの曲を消させたのはクリプトン社」であるとしたら、ちょっと残念です。デッドボールPの楽曲は、好き嫌いはあっても「ただエロいだけじゃなく、独自の表現や独自の世界を作り上げている」のは誰もが分かると思うし、そういうのをロードローラーで踏み潰すような行為をクリプトン社が行うのは、大人の事情があるにしても残念です。

デッドボールPの作品のお薦め(普通系)

デッドボールPの「クリエイター」としてのレベルの高さをまざまざと見せつける名曲2曲です。特に「金の聖夜霜雪に朽ちて」は、あの山本弘先生をも泣かせた、とてもよく出来た「SF」なクリスマスソングです。「クリスマスソング」としても「ボーカロイド初音ミク」としても、「他の楽曲とは全く異なる世界」を綴っている名曲です。自分は、John Lennonの「Happy Xmas」以来の衝撃を受けました。

nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのオリジナル曲 金の聖夜霜雪に朽ちて -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1807929
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのオリジナル曲 永久に続く五線譜 -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1647289

デッドボールPの作品のお薦め(ちょっとH系)

以下のリンクは削除対称なものが多いですが、そこから「再うp」された動画のマイリストに飛べると思います。これらを聞いたことが無い方には是非お薦めしたい楽曲です。

nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲3 私は人間じゃないから -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1418163
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲1 既成事実 -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1480739
nicovideo:keyword:初音ミク">初音ミクのちょっとHなオリジナル曲8 続・既成事実 -Full ver.-:http://www.nicovideo.jp/watch/sm1849905
【はっぺー】『既成事実』を記録してみた【記念】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1883246

彼の楽曲はちょっとエロティシズムに走りながらも、ボーカロイドという存在であるがゆえの狂おしいまでの愛情表現や激情」が見事に表現されていると私は思います。聞いたことの無い人は是非何度かリピートして聞いてみて欲しいです。

そのデッドボールPの世界にまんまとはめられた人達と、デッドボールPとの心温まる伝説の祭りが「『既成事実』を記録してみた」です。

コメントへのリプライ

沢山のコメントありがとうございます。本来はコメント欄にてお返事するのが筋なんでしょうけれど、ちょっと長めになりそうなので、追加エントリにて失礼します

>えーっと様
自分も事を荒立てる気はないです。クリプトンやYAMAHAニワンゴに凸って見たりなんていうことは考えてませんし、そういうことはするべきではないでしょう。あとエントリではちょっと誤解されがちな書き方をしてしまいましたが、自分は少なくともクリプトンは無実であると信じています。

ただし、「何が起こってるのか」という可能性について情報を集めてみたり、検討してみたり」ということは、「クリプトンやYAMAHAニワンゴに迷惑をかけない」「事をを荒立てない」為にも、えーっと様のおっしゃる「第三者の思惑」を無に帰するという面からも有効かと思ってます。群集心理ってやつからすると、「情報が無い」「クリプトンか?ヤマハか?ニワンゴか?」と疑心暗鬼な状態が一番ヤバいわけで。ただし、だからといって、「じゃあ情報収集するのに、いっちょメール出してみるか、みんなで送れば1000通ぐらいになるか?」なんて事は絶対に自重すべき、という話で。

それにしても、常識で考えたら「消せ」という要求に対しては、「これは本当にあなたたちが送ってきたものですか?」「本当に消しますか?」という確認プロセスぐらいはありそうなもんなんですが、「胡散臭い権利者削除の事例が少なからずある」のが事実であれば、自分が切り捨てた可能性である「騙り」の可能性が高くなってきますね。

>通りすがりP様、通りすがり様
それだったら普通はニコニコに矛先が向くでしょうし、削除理由も「エロいから削除(意訳)」でしょうね。本当に運営が「エロいから削除」したんなら、それを隠す意味はないし、圧力団体としてもクリプトンに圧力をかけてニワンゴに圧力をかけさせるぐらいなら直接ニワンゴに凸って消させる方が手っ取り早いでしょうし・・・・。

>通りすがり(2008/01/19 19:17)様
作者でも関係者でもない私たちに何ができるかっていうと、結局のところは応援することだ、というのはその通りかと思います。それにしてもデPは強いですね。今後の活躍に期待したいです。

>うーん様
結局「誰が消させたか」が現時点では不明というのが大騒ぎ(とは自分は思ってないけれど)になっている原因でしょうね。少なくともクリプトンが本当に消させたとは思えない、というある種の信頼が前提にあるとは思います。

ただ、「エロいから削除」とニコニコ判断したのなら「危険球退場www」てなノリでデPの伝説にまた1ページって話ですけれど、第三者が「権利者を騙った削除」を事実上行なえるのだとしたら大問題だと思うんですよね。デPの場合は「公序良俗規定」の話があるから問題が混乱しがちですが、「運営が消す」「ヤマハ/クリプトンが消させる」のと「クリプトンや権利者を騙る第三者が消す」のでは問題の重大さの本質や削除行為の正当性が全く違うんです。「デPが公序良俗規定ギリギリだったのは事実なんだから、消させたのが誰かというのは問題じゃない」ことにはならない、という暗黙の認識が今回の騒動をカオスにしてるんじゃないでしょうかね。

>赤ちゅん様
お気にすることはないですよ。てか、初音ミクニュースにURLが載っちゃってますしw
ご意見とお心遣いありがとうございます。

セカンドライフや円天すら良心的に思えるビジネスシステム

その名も「Xing World

2chの「セカンドライフが過疎ってる件について(意訳)」なスレでROMってたら、こんなのが出てきました。

Xing World プロモーションビデオ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1709803

本当に凄いですこれ。何が凄いって、もうなんていうかどっから突っ込めばいいのかわからないぐらい突っ込みようがありすぎます。ナレーターの人や映像で展開される内容が、もう「マルチ商法」「詐欺まがい商法」「悪徳商法」のやり口そのままコピペしたかのような。過去に色々とそういう商法がありましたけれど、それすらもまだ良心的に思えるぐらい突っ込みどころ満点です。円天やジーオーですら、一応手元には「モノ」が残ったというのに・・・。

ジーオーの場合は、あの大神会長のある意味面白すぎるキャラクタや面白すぎる映像内容がマニアックなエンターテイメントになっていて笑い飛ばせる人が多かったのでしょうが、このXing Worldはもうなんというか、そういうのすら全く感じられません。突っ込み練習動画ですかねこれ。

分かり易い対策ビデオに有効か

むしろこれは、日本の小中学校やパソコン学校で教材として学ばせてもいいかもしれません。孫子曰く「敵を知り己を知りてのち戦えば百戦危うからず」。世間には「情報弱者を騙してカネを稼ごう」という魑魅魍魎が溢れています。そういう魑魅魍魎は、言葉巧みに情報弱者を騙そうと必死になってきています。これからの日本において、「あまりにも怪しい商売」の知識、「あまりにも怪しい売り文句」の予習が必要なのではないでしょうか。それにはこれが最も適切なツールかもしれません。何しろ過去の悪徳商法やマルチまがい商法の煽り文句や宣伝文句をそのままコピペってるような内容ですからねぇ。

(2007.12.16 追記)運営会社について

「XING」といえば、ちょっと昔はSega Saturnのゲームで、今では「JOY SOUND」で有名な企業ですが、どうやらその企業と「Xing World」とは全く関係ない模様です。自分は「XING」のゲームに親しんでいたことがあるので、本当にそことは関係なくて一安心でした。

Xing World」の運営企業はこちらですね。企業トップページにも、それらのリンクや情報やニュースがあったりします。

株式会社ビズインターナショナル
http://www.biz-int.jp/

Xing World」という名前からして、元ゲームメーカー、現Joy Soundの「XING」が開発・主催・運営しているかのように誤解してしまいそうなので、誤解している人が居たら突っ込んであげたいと思います。

(2007.12.16 追記)Xing Worldよりも

こっちの方がまだ楽しめそうな気がしますね。バーチャル空間でバス釣りをやって楽しいかというと自分はノーと言いますけどw

Super BLACK BASS Online
http://www.biz-int.jp/blackbass.html

(2007.12.17 追記)やっぱり2chにもスレ立ってましたね

さすが2ch。この手の情報やら検証が早い早いw

ネットワークビジネスXing Worldっってどうよ?
http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/sns/1187884486/

さてこれから斜め読みしてみますか。色々な面白そうな攻防が見られそうである意味wktk

(2007.12.17 追記) Super BLACKBASS OnlineとXing Worldのスレの斜め読み途中

やっぱりというかなんというか・・・なかなか興味深い話が専門スレで出てきていましたね。さすが2ch。こういうときは頼りになります。

Super Black Bass Onlineについての情報
http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/sns/1187884486/220
Xing Worldのまとめ途中経過
http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/sns/1187884486/332

ぶっちゃけここまではスレの内容は予想通りの展開を見せております。「仁」と名乗る人の話がある意味で非常に興味深いですね。

プロの犯行

そこらへん中のBlogで話題になっていて今更感がありつつも、それでもどうしても語っておきたいことが出来ました。

ITmediaオルタナティブ・ブログで、吉川さんがかつて言っておられたお話

初音ミク現象に見る集合知活用型作品開発のポイント
http://blogs.itmedia.co.jp/knowledge/2007/09/post_6f3a.html

ニコニコ動画の最もすばらしい点」で取り上げられているように、ニコニコ動画およびその周辺には地道に作成されてきた初心者はどうすれば良いかをまとめた技術解説動画が多数蓄積されている。これは今回の初音ミクの場合も全く同じで、ソフトのチューニングに関する解説動画が既にいくつも掲載されているし、そもそも「描いてみた」や「モデリングしてみた」などは初心者にとっては作品を見ること自体が技術ノウハウの取得に繋がる。

とんでもない実例が来ました。01_ballade等、プロの犯行と噂される作品は山ほどありましたが、遂に本物のプロ、それも相当のビッグネームの犯行確定した代物が登場しました。

和音ミク(♂)を描いてみたぞ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1541743

うp主は「コゲどんぼ」、あのゲーマーズのマスコットキャラデ・ジ・キャラット」のキャラクターデザインで有名な人です。今回描いたのは、どんぼ先生が描かれてる「かみちゃまカリン」というマンガの登場人物だそうですが、

Photoshop CS。かなりサクサク進行します。所要時間は録画してたら異様に掛かったけどキャラだけなんで普段なら下書き10分,線画15分,塗り1.5〜2時間程度かと。

何が凄いってこれだけのクォリティにして、この環境でこの手の速さ。さすがプロは凄いです。自分もなんども動画見ましたが、なんというかもう凄すぎて笑うというレベルです。コゲどんぼというビッグネームのプロによる、オリジナルキャラの作画風景を無料で見られるというのは本当に凄い時代になったものです。

「ヴォーカルトラック提供」のインパクトについてもう少し詳しく

ランティスが「楽曲の使用許可」ではなく「ヴォーカルトラックの提供」を行なうというのを、先のエントリでは「本当に勇気のいる決断」とさらっと書いてましたが、この話は、今までに前例の無いどころじゃなく、誰しも想定すら出来なかったぐらい本当に凄いことだと思います。なぜならそれまではレコード会社以外誰も持っていなかった、レコード会社の財産の一部そのものをレコード会社がユーザに無償で提供するという決断だからです

ランティスの決断の意味

ニコニコの職人へのランティス/JAM Projectからの音源提供と言っても、「CDの音源を使って良いからMAD映像作ってもいいよ」「カラオケトラック使ってもよいから是非歌ってみてくれ」レベルなら、ユーザー視点からはあくまで許可にしかなりませんでした。もちろん音源の使用許可が得られるというのだけでもそれは非常に斬新なことなんですが、実は今まででも「おおっぴらに使っちゃダメ」だっただけで、音源そのものはユーザーの手元にある(少なくともリッピングで簡単に手に入る)状態だったわけです。

ところが、「ヴォーカルトラック」となると話の次元が全く違います。レコード会社が持つ財産は基本的に権利という抽象的概念に立脚したものですが、実体の存在に立脚する財産もあります。それが「音源(原盤)」です。そのような代物は、本来「レコード会社」にとっては基本的に門外不出であり、大げさ誇張掛け値なしの「レコード会社が有する財産」なわけです。

勿論ユーザーが音声編集ツールを駆使して通常トラックとカラオケトラックの差分を取ってボーカルトラックを抽出というのは十分可能だったのでしょう。しかし少なくともそういう作業は、本音源やカラオケ音源と比較して格段に高い障壁でしたし、ヴォーカルトラック抽出ができない場合だって沢山ありました。

しかし、JAM Project/ランティスは、レコード会社の財産とでも言うべきものをニコニコユーザーに提供してくれるわけです。驚きを禁じえません。正直いって今でもニュースが信じられないです。この決断は本当に素晴らしいものです。ランティスの社長さんは、元々影山ヒロノブさんのバンド仲間(「レイジー」のキーボード担当)だったそうで、ニコニコ動画イノベーションの本質を体感的に感じているのかも知れませんね。

なぜ「ヴォーカルトラック」なのか妄想してみる

判断の素晴らしさはさておき、なぜ「本音源の許諾」でも「カラオケ音源の許諾」でもなく「ヴォーカルトラックの提供」だったのか、という話をちょっと妄想してみたいと思います。もちろんMAD作成職人サイドから見込まれる需要や企画意図というのもあるのでしょうが、この辺にはやはり「大人の事情」というのが大きいのではないかと邪推してみます。簡単に言うと以下の二点からではないでしょうか。

  1. レコード会社への売り上げの影響が小さい
  2. 権利処理が非常に単純

第一点目については、JAM ProjectのCDとは全く需要が被らないというのが明らかと言い換えられます。無伴奏のボーカルトラックを普通のファンが欲しがりはしないでしょうし、そういうのをコレクション的に欲しい人ならCDは間違いなく買うでしょう。提供した音源が市場を食うことがありえないわけですから、企業にとっても経済的な損失はありません。

そして第二点目。実はこれが結構大きいのではないかと思います。レコード会社が音源を作るのにも非常に多くのミュージシャンやエンジニア、権利関係者が入り混じることになります。細かく言うといろいろあるでしょうが、ざっと数え上げただけでも

通常音源(歌入り)
シンガー、カラオケ伴奏関係者(実演者)、作詞者、作曲者、編曲者、レコード会社
カラオケ音源
カラオケ伴奏関係者(実演者)、作詞者、作曲者、編曲者、レコード会社

これだけの権利関係者が入り混じるわけです。しかし、ヴォーカルトラックの提供の場合は恐ろしく話が簡単になります。

ヴォーカルトラック
シンガー、作詞者、作曲者、レコード会社

これだけの権利処理で済みます。そしてさらに提供される楽曲「Rocks」については、作詞作曲とも影山ヒロノブです。彼はJAM Projectの中心人物ですから早い話影山ヒロノブとレコード会社社長(影山ヒロノブのバンド仲間)に話を通せば90%は話が通ったも同然なわけです。

もちろん、それ以外にも「JAM Project」という名称を使用したり、ロゴマークの利用したり、なんていうあたりの権利処理も色々とあるのでしょうが、一番ややこしそうなところである「音源の権利処理」を比較的簡単にクリアできるというのがポイントだったのではないでしょうか。

この企画がニコニコ動画と日本のネットにもたらすもの

JAM Project協賛のこの企画は、ただ単に「MAD祭りを堂々と行える」ということに留まりません。ニコニコ動画というのは著作権などの絡みもあって非常にグレーな存在というかもう世間的印象としては真っ黒なサイトといっても過言ではなく、私を含むニコ厨の人が「新たな創作と発表の場」という主張をしても、どこかしら「後ろめたい」気持ちがあったように思います。しかし、今回のJAM Projectの協賛企画は、「権利者サイド、ミュージシャンサイドにも理解者がいる」という事実をニコニコ動画のユーザーみんなに知らしめることになります。全面的に認めるわけじゃないでしょうし、音源の丸々うpなんかはご法度でしょうけれども、少なくとも全否定する人ばかりじゃなかった、ニコニコ動画について私を含むニコ厨の皆さんが言いつづけていた話を、一部でも理解してくる人が権利者サイド、ミュージシャンサイドに実在したという事実が何よりの朗報だと思うのです。

全てが許されたわけではないでしょう。未来はまだ明るいとはいえないでしょう。しかし、確実に光が差し込んで来ました。今までに何度となく書いたセリフですが、今改めて思います。「日本始まったな」、と。

ニコニコ革命 part2

昨日読みました吉川さんのエントリにかなり禿同で、namcoとニコニコとアイマスとMADの未来について自分も色々と語りたいと思ってた矢先にまたとんでもないニュースが飛び込んできました。

ニコニコ職人たちは公式MADの夢を見るか

提供曲をユーザーがリミックス、ニコ動で公開OK JAM Project公認イベント
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/12/news078.html

 権利者公認でユーザーが楽曲をリミックス、「ニコニコ動画」で公開──ニワンゴランティスは11月12日、アニメソングアーティストJAM Project」のプロモーションにニコニコ動画を活用する取り組みを始める。
(略)
ユーザーは許諾条件のもと、提供楽曲を使ってリミックス曲を作成でき、「SMILEVIDEO」に投稿してニコニコ動画に公開できる。特設サイトでは、応募曲へのJAM Projectからの寸評も公開する予定。

JAM Project公式リミックス祭 in ニコニコ動画
http://www.cho-animelo.com/contents/jam/ より引用
※記事は画像データで提供されています。画像データからのテキスト転写は引用者によります。文字色は正確ではありません。引用者が強調したい個所には太字及び色変えをしてあります。

JAM Projectからニコニコ動画をご覧のみなさんに、「Rocks」のヴォーカルトラックを提供してもらっちゃいました!!このヴォーカルトラックをステキにアレンジしてニコニコ動画で発表しちゃってください!!

◆こんなリミックス動画を募集します
JAM Project「Rocks」に混じって「歌ってみた
JAM Project「Rocks」の伴奏を「演奏してみた
JAM Project「Rocks」の熱唱にあわせて「踊ってみた
JAM Project「Rocks」のイメージで「描いてみた

JAM Project 公式リミックス祭り in ニコニコ動画」は、「公式」の祭りです。JAM Projectの皆さんをはじめ、関係者一同、ニコニコ動画を新たな創作の場として前向きに捉えてこれを実現できる運びになりました。野暮なことは言いませんが、誰もがニコニコできる祭となることを祈ります。参加者の皆さんも、JAM Projectさんも、ランティスさんも、できれば我々も。(ニコニコ動画運営一同)

JAM Project in ニコニコ動画」コメントムービー(3)
http://www.nicovideo.jp/watch/ca1486446

あのJAM Projectニコニコ動画に降臨!!!
ついに「JAM Project公式リミックス祭 in ニコニコ動画」の企画発表!ニコ厨のみなさんへの大切なお知らせ第3弾です!!


JAM Projectの「Rocks」とは、2007年8月8日に発売されたシングルで、「スーパーロボット大戦OG」のオープニングソングだそうです。ボツ曲でもなくアルバムの埋め草でもなく、スーパーロボット大戦のOPに使われるぐらいJAM Projectのメインストリーム(本線)な曲です。

なんと素晴らしい大ニュースでしょうか。JAM Projectといえば、アニソン系歌手のなかでは最もメジャーで人気の高いグループです。弾幕でおなじみの真赤な誓い福山芳樹を始め、影山ヒロノブなどのアニメファンおなじみの歌手が勢ぞろいしている、実力人気ともに大変高いグループです。そのグループが、本線ど真ん中の楽曲をニコニコの祭りに提供してくれるというのは本当に驚いてしまいます。しかも提供されるのが「ボーカル入り楽曲」でも「インストゥルメンタルトラック」でもなく、「ヴォーカルトラック」です。それまでは通常音源とカラオケ音源から差分を取るなどしてしか手に入れられなかった、レコード会社の財産に等しい「原盤」の音源ランティスも本当に勇気の要る決断だったと思います。

加速に加速が加わる革命は止まらない

先日の「映画の公式MAD募集」といい、今回のJAM Project祭りといい、ニコニコ動画をベースにした革命がさらに加速していくのが目に見えて分かります。アイマスMAD、初音ミクブームと順調に積み重ねて来たニコニコ動画に、さらなる加速がかかる今回の決断。今まで何度も言われた言葉ですが、またさらに「日本始まったな」マイルストーンとなることでしょう。
この手の「革命」「潮流」は、決して止まることは無いでしょう。一度自由を知った人は更なる自由を求めて歩みを進めることは、歴史が証明しています。しかも、ニコニコ動画のユーザー層にはあまりなじみの無い(というよりもアンチが多い)avexや吉本ではなく、ユーザーの嗜好ど真ん中の「JAM Project」ですから、この勢いはさらに増していくのでしょう。

wktkが止まらない

今回の祭、やはり「歌ってみた」系の再爆発が本線でしょうか。今でも根強い人気やファンを持つボーカリストがニコニコにはいますし(自分はJさんのファンです)、アニソングループの頂点の一つであるJAM Projectの皆さんと一緒に歌えるというのは、新たなボーカリスト参戦も期待できますね。他にも全く予想もできない潮流が出てくるかもしれませんし、そこからまた新しい才能や流行が発生することも期待してしまうのは自分だけではないでしょう。こんなにwktkしているのは久しぶりです。自分にとってはそれこそ初音ミクがデビューしたとき以来のwktkですね。

ナムコの進む道はどこにあるか

こういう流れになると、やはり「ニコニコ革命 ver.1」の柱である「アイドルマスター」のナムコが沈黙していることが残念かもしれません。ニコニコ動画の革命の礎であるアイドルマスターが、L4Uという新作の発表に収まっている(といっても仕様からしてもはやMAD職人御用達みたいなものでしょうが)のは少し寂しいというのが実感です。namcoはユーザーコミュニティに介入など滅多にしないメーカーなのですが、吉川さんもおっしゃられるように、完全解放は無理でも「MAD募集祭り」ぐらいは是非やって欲しいものですね。このあたりのことはまた別途文章を書いてみたいと思います。

ニコニコ動画、新たなステージへ

なんか凄いことになってます。

ニコ動、2次創作OKで新作映画を公開
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/09/news035.html

新作映画の本編の一部が、2次創作可能な形で「ニコニコ動画」上で公開される。12月1日公開予定の「エクノクロス〜魔境伝説〜」のプロモーションの一環で、本編の一部を自由にダウンロードできるようにし、ユーザーはその映像を使って動画を制作・投稿できる。ニコニコ動画で権利者公認の動画素材を提供するのは初。

ニコニコ動画のMAD職人の技術やセンスに幾度も脱帽させられた人なら、一度は夢見たであろうコラボレーションの種がまかれるようです。誰もが夢見ていたけれど誰もが「絶対に実現しないアイディアだろうなぁ・・・」と諦めかけていた夢の企画が現実に動き出していることは本当に驚くべきことです。

公式サイト行って見てみました

タイトルからは、なにやらファンタジー系な世界観を連想してしまいましたが、全然違ってました。なにやら日本古来のホラームービーのようですね。呪いとかそういうオカルト世界観・精神的な怖さを煽るのではなく、刃物だ斧だ土地の儀式だ系の、暴力を想像させるときの恐怖を煽る映画のようです。このタイトルからは全然想像もつかない世界観ですね。

それで、公式サイトを見て初めて分かったんですが、この映画ってavexが絡んでいるんですね。点と線が直結したとは言えないまでも、ニコニコとの提携の効果なのでしょうか。それもこんな意外かつ太っ腹な方向でくるとは全く予想だにしていませんでした。avexが絡んでくるとしたら、普通に所属アーティストのPVを有料公開とかぐらいかなぁ、なんて思ってたらいい意味で大間違いでした。ここは素直に「素晴らしい」と言わざるを得ませんね。

さてこれをMAD化するとしたら

ITmediaの記事では何処らへんがニコニコに提供されるかは明かされていませんが、公式サイト上のデモムービーをMAD化するとしてどういうMADになるのか想像もつきませんね。自分に単純に考えつくのは、カット割流用とキャラ差し替えで全く違ったストーリーに見せるぐらいですが、それでもどういうものが面白そうかというのはなかなか思い浮かばないものですね。

それにしても、こういう風に妄想をめぐらせていると、本当にニコニコのMAD職人さんの腕前とかセンスは凄いと感じてしまいます。どういう作品が作られ、または作られないのか。今から非常に楽しみといえる企画ですし、この企画が成功して、第二、第三の企画が進行することを期待したいところですね。